愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
なんでもいいから、茜の力になってやりたかった。母親に男ができたことで寂しい思いをしているなら、単なる慰め、話し相手でもいい。
太一郎が茜にしてやれるとこは、それくらいしか残されていなかったのである。
その日から、太一郎の精神状態は、日に日に追い詰められて行く。
新しく夜の仕事を見つけなければならない。そして、数日以内に入院費用だけで二十万円を用意する必要もあった。
いよいよ腎臓でも売るしかないのか、と思ったとき、郁美から連絡があったのだ。
『今から、お見舞い? 毎日大変ねぇ』
病院に入る寸前、携帯を切ろうとしたときに郁美から電話がかかる。
あまりのタイミングのよさに、太一郎は周囲を見回した。病院の駐車場を挟んだ歩道の向こう、一台の真っ赤なロードスターが見える。
『俺のことつけてんのか?』
『やぁねぇ。そろそろ覚悟が決まったかなぁっと思っただけよ。明日には奥さん退院じゃないの? お金はできたのかしら?』
『……』
『貧乏ってイヤよねぇ~。あたしだって、六十の爺さんと寝て、手にしたお金なのよ。見返りは求めて当然よね? そう思わない?』
太一郎には何も答えられなかった。
『このまま、車停めて待っててあげるから。見舞いはさっさと済ませて来なさいね。二度と偉そうな口叩けないように調教して』
途中で電話を切り、そのまま電源もオフにした。
液晶画面から明かりが消え、命が終わったような携帯電話を握り締める太一郎だった。
太一郎が茜にしてやれるとこは、それくらいしか残されていなかったのである。
その日から、太一郎の精神状態は、日に日に追い詰められて行く。
新しく夜の仕事を見つけなければならない。そして、数日以内に入院費用だけで二十万円を用意する必要もあった。
いよいよ腎臓でも売るしかないのか、と思ったとき、郁美から連絡があったのだ。
『今から、お見舞い? 毎日大変ねぇ』
病院に入る寸前、携帯を切ろうとしたときに郁美から電話がかかる。
あまりのタイミングのよさに、太一郎は周囲を見回した。病院の駐車場を挟んだ歩道の向こう、一台の真っ赤なロードスターが見える。
『俺のことつけてんのか?』
『やぁねぇ。そろそろ覚悟が決まったかなぁっと思っただけよ。明日には奥さん退院じゃないの? お金はできたのかしら?』
『……』
『貧乏ってイヤよねぇ~。あたしだって、六十の爺さんと寝て、手にしたお金なのよ。見返りは求めて当然よね? そう思わない?』
太一郎には何も答えられなかった。
『このまま、車停めて待っててあげるから。見舞いはさっさと済ませて来なさいね。二度と偉そうな口叩けないように調教して』
途中で電話を切り、そのまま電源もオフにした。
液晶画面から明かりが消え、命が終わったような携帯電話を握り締める太一郎だった。