愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
直後、自販機の上で携帯が鳴った。太一郎が駆け寄り手に取ると、それは茜の携帯電話だ。そして番号はおそらく……。


「――北脇か?」

『ずいぶん早く来たんですね、先輩』


やはり見える位置にいるのだろう。太一郎がそのことを口にすると、北脇はさも楽しそうに笑った。


『今のあんたが忍び込むとは思えないからな。警備室に電話したら一発で教えてくれたぜ』

「だったら……今、どこにいるんだ? 用があるのは俺だろう? すぐに行くから……佐伯は放してやれ」


太一郎がそう言ったあと、携帯電話の向こうに微妙な沈黙が流れた。やがて小さな声が聞こえ……太一郎は耳を澄ませるが、話の内容まではわからない。

もう一度、北脇を説得しようとした瞬間、頬を叩く音と女性の悲鳴が聞こえた!


『何するのよっ! 太一郎、来ちゃダ……キャ!』

『余計なこと言うんじゃねーよ。おまえは黙ってろ!』


もう一度同じ音が聞こえ――「北脇っ! 北脇、やめろ! 頼むからやめてくれ、北脇っ!」茜の携帯電話に向かって太一郎は叫んだ。


『うるさい女だな、コイツ。往生際が悪いっつうか』


数秒後、携帯から北脇の声が流れた。


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