愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
『この男です! あたしをレイプした挙げ句、夫にばらすって脅迫したのよ! また、お金を受け取りに来たんだろうけど、残念だったわね。警察に通報しましたから! 泣き寝入りするような女じゃないのよ!』
いきなり郁美に叫ばれ、次々に私服、制服警官が姿を見せる。
『伊勢崎太一郎さんですね。小平警察署の者ですが、少しお聞きしたいことが』
あとから思えば冷静に対処するべきだった。
だが小心者の太一郎は、警察に囲まれた瞬間パニックになってしまう。
なんと警察の拘束を振り解き、その場から逃げ出してしまったのだ。結果、すぐに追いつかれ……逃走の恐れありということで緊急逮捕されたのだった。
「いいじゃない。レイプの件は告訴を取り下げたし、恐喝は勘違い。公務執行妨害も罪にはならなかったんでしょ?」
裁判所は逮捕状を出さず、太一郎はすぐに釈放された。
それらはすべて宗の手配だ。都庁に勤める宗の知人を通じ、名村夫妻に藤原の名前を教えたのである。名村は大急ぎで告訴を取り下げ、郁美にも証言を撤回させた。
だが、名村の本心は太一郎への疑いを消したわけではなかった。
すぐに揉み消されたが、『元メイドが告白、私は太一郎にレイプされた』という藤原グループの醜聞が今年に入ってすぐ三流週刊誌を騒がせたことがある。
名村はそれを覚えていて――太一郎は素行が悪く家を追い出された男だ。いよいよ真面目に働くのに飽きて、郁美に目をつけたのかもしれない――そんなふうに考えたのだった。
いきなり郁美に叫ばれ、次々に私服、制服警官が姿を見せる。
『伊勢崎太一郎さんですね。小平警察署の者ですが、少しお聞きしたいことが』
あとから思えば冷静に対処するべきだった。
だが小心者の太一郎は、警察に囲まれた瞬間パニックになってしまう。
なんと警察の拘束を振り解き、その場から逃げ出してしまったのだ。結果、すぐに追いつかれ……逃走の恐れありということで緊急逮捕されたのだった。
「いいじゃない。レイプの件は告訴を取り下げたし、恐喝は勘違い。公務執行妨害も罪にはならなかったんでしょ?」
裁判所は逮捕状を出さず、太一郎はすぐに釈放された。
それらはすべて宗の手配だ。都庁に勤める宗の知人を通じ、名村夫妻に藤原の名前を教えたのである。名村は大急ぎで告訴を取り下げ、郁美にも証言を撤回させた。
だが、名村の本心は太一郎への疑いを消したわけではなかった。
すぐに揉み消されたが、『元メイドが告白、私は太一郎にレイプされた』という藤原グループの醜聞が今年に入ってすぐ三流週刊誌を騒がせたことがある。
名村はそれを覚えていて――太一郎は素行が悪く家を追い出された男だ。いよいよ真面目に働くのに飽きて、郁美に目をつけたのかもしれない――そんなふうに考えたのだった。