愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
部屋の前まで行き、太一郎は驚いた。
まるで清掃中のようにドアバーが挟まっている。こういったホテルは精算が済むまで鍵が開かないようになっていたはずだが……。
太一郎は不審に思いつつ、ドアをノックした。
「北脇、いるのか? 佐伯、いたら返事してくれ」
太一郎はできる限り小さな声で尋ねる。
同時に、茜の携帯から北脇にかけ直すがコールしない。どうやら電源を切ったらしい。
いきなり飛び込んで赤の他人がいたとき……場所が場所だけに、シャレにならないだろう。
その反面、昼間からこんな所にしけ込む連中が警察沙汰にするとも思えなかった。
太一郎はドアのノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
これが太一郎を嵌める罠ならそれでいい。ヤバイ連中が出て来て、袋叩きにされたとしても……。傷ついた茜の姿を見るくらいなら、いっそ殺されたほうがマシだった。
室内は静寂に包まれている。
オフホワイトのなんの変哲もない壁が続き、床はくすんだブルー。かつては爽やかな水色だったのかもしれないが、今は跡形もない。
左側にふたつのドアが――おそらくトイレとバスルームだろう。
狭く短い廊下を進むと、右手に視界が広がった。奥にダブルサイズのベッドがあり、手前にミニソファセットが置かれている。壁にはテレビが、その下に冷蔵庫とアダルトグッズに自動販売機があった。
パッと見た感じでは誰もいないように思え……その直後、太一郎はベッドの反対側に座り込む人影を見つけたのである。
まるで清掃中のようにドアバーが挟まっている。こういったホテルは精算が済むまで鍵が開かないようになっていたはずだが……。
太一郎は不審に思いつつ、ドアをノックした。
「北脇、いるのか? 佐伯、いたら返事してくれ」
太一郎はできる限り小さな声で尋ねる。
同時に、茜の携帯から北脇にかけ直すがコールしない。どうやら電源を切ったらしい。
いきなり飛び込んで赤の他人がいたとき……場所が場所だけに、シャレにならないだろう。
その反面、昼間からこんな所にしけ込む連中が警察沙汰にするとも思えなかった。
太一郎はドアのノブに手をかけ、ゆっくりと回す。
これが太一郎を嵌める罠ならそれでいい。ヤバイ連中が出て来て、袋叩きにされたとしても……。傷ついた茜の姿を見るくらいなら、いっそ殺されたほうがマシだった。
室内は静寂に包まれている。
オフホワイトのなんの変哲もない壁が続き、床はくすんだブルー。かつては爽やかな水色だったのかもしれないが、今は跡形もない。
左側にふたつのドアが――おそらくトイレとバスルームだろう。
狭く短い廊下を進むと、右手に視界が広がった。奥にダブルサイズのベッドがあり、手前にミニソファセットが置かれている。壁にはテレビが、その下に冷蔵庫とアダルトグッズに自動販売機があった。
パッと見た感じでは誰もいないように思え……その直後、太一郎はベッドの反対側に座り込む人影を見つけたのである。