愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
茜の頬は赤くなり、唇の端が切れていた。
携帯電話から聞こえた音と悲鳴が太一郎の脳裏に甦る。彼は右の拳を握り締め、思い切り壁を殴った。
壁はかすかに揺れ、天井からパラパラと埃が舞い落ちる。
太一郎は茜に近づこうとして躊躇した。
オフホワイトのキャミソールは両方の肩紐がずれている。そして、しっかりと成熟した胸元には指の形をした痣が見え……。それは、痕が残るほど、北脇が茜の胸を掴んだ証拠であろう。
そんな彼女に何かかけてやりたくても、手元には何もない。
さらには、茜が膝を立てているのも問題だ。
デニム地のミニスカートから伸びる生足もさることながら、ギリギリまで捲れ上がった裾から、奥の翳りが目に入ってしまう。
「クッ……ソォ」
目を閉じた瞬間、太一郎は眩暈を覚え、ベッドの端にドサッと座り込んだ。血管が切れてしまいそうなほど、頭の中が沸騰している。
(俺が……まともになろうなんてしなきゃよかったのか? 救われようとか、普通の人生が送りたいとか、そんなことを考えたから)
不覚にも目頭が熱くなってくる。
太一郎は両手で顔を覆うと、しばらくの間、身動きもできなかった。
「た、いちろう……ごめん。太一郎のせいだなんて言って、ごめんなさい。怒らないで……私」
「お前が謝るなよ。全部俺のせいだ。中途半端に関わった俺の」
「中途半端なんかじゃないよ。私が家にも店にも居辛くて……会いに行ったら、話を聞いてくれたじゃない。私、ずっと家のことで一所懸命だったから……友達も彼氏もいなくて。だから、太一郎が引け目に思ってるのをいいことに、ワガママ言って付き纏っただけなの。太一郎のせいじゃないから……私……私」
携帯電話から聞こえた音と悲鳴が太一郎の脳裏に甦る。彼は右の拳を握り締め、思い切り壁を殴った。
壁はかすかに揺れ、天井からパラパラと埃が舞い落ちる。
太一郎は茜に近づこうとして躊躇した。
オフホワイトのキャミソールは両方の肩紐がずれている。そして、しっかりと成熟した胸元には指の形をした痣が見え……。それは、痕が残るほど、北脇が茜の胸を掴んだ証拠であろう。
そんな彼女に何かかけてやりたくても、手元には何もない。
さらには、茜が膝を立てているのも問題だ。
デニム地のミニスカートから伸びる生足もさることながら、ギリギリまで捲れ上がった裾から、奥の翳りが目に入ってしまう。
「クッ……ソォ」
目を閉じた瞬間、太一郎は眩暈を覚え、ベッドの端にドサッと座り込んだ。血管が切れてしまいそうなほど、頭の中が沸騰している。
(俺が……まともになろうなんてしなきゃよかったのか? 救われようとか、普通の人生が送りたいとか、そんなことを考えたから)
不覚にも目頭が熱くなってくる。
太一郎は両手で顔を覆うと、しばらくの間、身動きもできなかった。
「た、いちろう……ごめん。太一郎のせいだなんて言って、ごめんなさい。怒らないで……私」
「お前が謝るなよ。全部俺のせいだ。中途半端に関わった俺の」
「中途半端なんかじゃないよ。私が家にも店にも居辛くて……会いに行ったら、話を聞いてくれたじゃない。私、ずっと家のことで一所懸命だったから……友達も彼氏もいなくて。だから、太一郎が引け目に思ってるのをいいことに、ワガママ言って付き纏っただけなの。太一郎のせいじゃないから……私……私」