愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
茜は立ち上がり、太一郎の隣に座る。

そんな彼女の腕を掴み、太一郎は真剣なまなざしで言った。


「茜、今すぐ病院に行こう」

「ヤダ!」

「取り返しのつかないことになるんだぞ!」

「イヤだってば。絶対に行かないっ!」

「頼む。俺が一緒に行くから、頼むから言うとおりにしてくれよ。頼む」


今度は太一郎が床に膝をつく。

ベッドに座った茜はきつく唇を噛み締めたまま、「それって、私が汚いってこと?」そんな言葉をポツリと呟いた。


「バカ野郎! そんなこと言ってんじゃねえっ」

「じゃあ、抱いて! そうじゃないって言うなら、私のことを抱いて。あの男を忘れさせてよっ!」


この部屋に入り、初めて茜は太一郎の目を見た。

その瞳に、太一郎は心を捕まれたのだ。去年とも、一ヶ月前とも違う。いつの間に、茜はこんな女の目をするようになったのだろう。


「お願い……太一郎。傍にいて、どこにも行かないで。同情でもいいから、私を抱いて」


茜の頬を伝う涙に太一郎は……。 


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