愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
(18)恋の犯した罪
「なぁ、マジで言ってんのか? 去年は訴えてやるって言うくらい、俺のこと嫌ってたじゃねぇか」
「女心は……色々変わるんだってば。それとも……バージンじゃないとイヤ?」
それは、太一郎にとっては厳しい問いかけである。
しかも泣いて縋られたら……胸に掲げた奈那子の顔から、思わず、目を逸らしてしまいそうだ。
「そんなんじゃねぇよ」
「だったら……」
「だから、女房がいるんだって」
「嘘! 結婚してないって聞いたものっ」
その言葉に、太一郎の意識は危うい場所から引き戻された。
彼は身を乗り出し、茜の両肩を掴んで尋ねる。
「誰から聞いたんだっ?」
「社長……夫人って言ってた。太一郎の働いてる会社の……三十歳くらいで派手な感じの女の人」
郁美だ。本当は三十代半ばだが、間違いないだろう。
茜を問い詰めると、太一郎の結婚は正式なものではない、と教えてくれたらしい。子供が産まれるのに入籍していないと言うことは、結婚する気がないか、太一郎の子供ではないのかもしれない、と。
太一郎は、本当は茜が好きなのかも……。
そんなふうに言われ、茜は郁美に気を許してしまう。質問されるままに、茜の目で見た太一郎の立場も色々話してしまったようだ。
道理で、郁美が藤原から金は取れないとアッサリ引いたはずである。
「女心は……色々変わるんだってば。それとも……バージンじゃないとイヤ?」
それは、太一郎にとっては厳しい問いかけである。
しかも泣いて縋られたら……胸に掲げた奈那子の顔から、思わず、目を逸らしてしまいそうだ。
「そんなんじゃねぇよ」
「だったら……」
「だから、女房がいるんだって」
「嘘! 結婚してないって聞いたものっ」
その言葉に、太一郎の意識は危うい場所から引き戻された。
彼は身を乗り出し、茜の両肩を掴んで尋ねる。
「誰から聞いたんだっ?」
「社長……夫人って言ってた。太一郎の働いてる会社の……三十歳くらいで派手な感じの女の人」
郁美だ。本当は三十代半ばだが、間違いないだろう。
茜を問い詰めると、太一郎の結婚は正式なものではない、と教えてくれたらしい。子供が産まれるのに入籍していないと言うことは、結婚する気がないか、太一郎の子供ではないのかもしれない、と。
太一郎は、本当は茜が好きなのかも……。
そんなふうに言われ、茜は郁美に気を許してしまう。質問されるままに、茜の目で見た太一郎の立場も色々話してしまったようだ。
道理で、郁美が藤原から金は取れないとアッサリ引いたはずである。