愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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茜は郁美に言われたことを確かめたかった。

そんなとき、北脇から電話があったのだ。太一郎の気持ちを、茜の方に向けられるチャンスだと言われた。

茜が助けを求めて、来てくれるかどうか。それだけでも太一郎の心を知ることができる。

北脇にすれば、本当に女性を攫ったら犯罪になってしまう。だけど、茜とお互いに協力し合う形なら……。

太一郎にひと泡吹かせてやりたい、そんな理屈で北脇は茜を説得したのだった。


茜自身、馬鹿なことをしているのはよくわかっていた。

しかし、このときの彼女は、初めて芽生えた感情に心を奪われてしまったのだ。

“相手の気持ち”より“自分の気持ち”を優先してしまう。そんな、愛と恋の境界線上に彼女は立っていた。




「今、何て言った?」

「……レ、イプ……されなかったの。されたって言ったら……太一郎が同情してくれるかもって……」



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