愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
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角を曲がった瞬間、太一郎の目に黒い塊が飛び込んで来た。
狭い路地に栓をするように停められた、真っ黒のメルセデスベンツCクラスである。フルスモークで見るからに怪しい車だ。
それが、太一郎たちの住むアパートの前に停まっていた。
太一郎の鼓動は瞬く間に激しく打ち始める。
彼が目を凝らしたそのとき、階段から人が下りて来た。その中に、ふたりの男に挟まれた奈那子の姿が見える。
太一郎は脊髄反射のように走り出していた。
「奈那子っ! お前ら何やってんだ!? 俺の女房を放せよっ!」
「あ……だめ、来ないでっ」
今にも泣きそうな奈那子の声を聞いた瞬間、太一郎は手近なひとりを殴り倒していた。
男は車に乗った運転手も含め四人。そのうちのひとりは、見たことがあるような比較的貧弱な三十代の男だ。奈那子の左右にいる男はどちらも二十代であろう。格闘家かボディガードのようにも見える、屈強な大男たちだった。
だが、体格だけなら太一郎も負けてはいない。
ひとり目を殴り倒して奈那子の手を取り、もうひとりと思ったとき――男の膝が太一郎の腹部に入っていた。
痛みと共に息が詰まる。
次の瞬間、男の拳が太一郎の顎を突き上げた。
角を曲がった瞬間、太一郎の目に黒い塊が飛び込んで来た。
狭い路地に栓をするように停められた、真っ黒のメルセデスベンツCクラスである。フルスモークで見るからに怪しい車だ。
それが、太一郎たちの住むアパートの前に停まっていた。
太一郎の鼓動は瞬く間に激しく打ち始める。
彼が目を凝らしたそのとき、階段から人が下りて来た。その中に、ふたりの男に挟まれた奈那子の姿が見える。
太一郎は脊髄反射のように走り出していた。
「奈那子っ! お前ら何やってんだ!? 俺の女房を放せよっ!」
「あ……だめ、来ないでっ」
今にも泣きそうな奈那子の声を聞いた瞬間、太一郎は手近なひとりを殴り倒していた。
男は車に乗った運転手も含め四人。そのうちのひとりは、見たことがあるような比較的貧弱な三十代の男だ。奈那子の左右にいる男はどちらも二十代であろう。格闘家かボディガードのようにも見える、屈強な大男たちだった。
だが、体格だけなら太一郎も負けてはいない。
ひとり目を殴り倒して奈那子の手を取り、もうひとりと思ったとき――男の膝が太一郎の腹部に入っていた。
痛みと共に息が詰まる。
次の瞬間、男の拳が太一郎の顎を突き上げた。