愛を教えて ―輪廻― (第一章 奈那子編)
そしてそれは、桐生にとっても同じこと。
贈収賄疑惑に巻き込まれる危険も避けたいが、一番恐ろしいのは義父の怒りだった。
今度の件で、泉沢との金に塗れた関係を義父に知られてしまう。その挙げ句、ろくでもない相手を娘婿に選んだと叱られることになった。
奈那子の妊娠を知らぬ義父は、可愛い孫娘の婿は自分が選ぶと宣言。義父の言葉に逆らえない桐生は、大慌てで奈那子に中絶を命令した。
しかし……。
『中絶はもう嫌です! そのためなら、太一郎さまのことは諦めます。わたし……泉沢さまに嫁ぎます』
父の思惑を知らない奈那子はそんなことを言い始めたのだ。
それが清二の耳に入れば、ふたりの結婚を阻止する術は桐生にはない。
もしそうなれば、義父は失態を犯した娘婿より、血の繋がった孫娘を選ぶだろう。
さらには、奈那子が男の子を産んだとき……桐生はこの家を追い出されるに違いない。清二を婿にして、最終的には曾孫にすべてを残す。義父がそう考えてもおかしくはないのだ。
奈那子が家を出たのはそんなときだった。
義父にはその事実を伝えず、『騒動が収まるまで、奈那子を海外に行かせた』と釈明した。そして、私設秘書を使い、極秘裏に奈那子の行方を捜させたのである。
贈収賄疑惑に巻き込まれる危険も避けたいが、一番恐ろしいのは義父の怒りだった。
今度の件で、泉沢との金に塗れた関係を義父に知られてしまう。その挙げ句、ろくでもない相手を娘婿に選んだと叱られることになった。
奈那子の妊娠を知らぬ義父は、可愛い孫娘の婿は自分が選ぶと宣言。義父の言葉に逆らえない桐生は、大慌てで奈那子に中絶を命令した。
しかし……。
『中絶はもう嫌です! そのためなら、太一郎さまのことは諦めます。わたし……泉沢さまに嫁ぎます』
父の思惑を知らない奈那子はそんなことを言い始めたのだ。
それが清二の耳に入れば、ふたりの結婚を阻止する術は桐生にはない。
もしそうなれば、義父は失態を犯した娘婿より、血の繋がった孫娘を選ぶだろう。
さらには、奈那子が男の子を産んだとき……桐生はこの家を追い出されるに違いない。清二を婿にして、最終的には曾孫にすべてを残す。義父がそう考えてもおかしくはないのだ。
奈那子が家を出たのはそんなときだった。
義父にはその事実を伝えず、『騒動が収まるまで、奈那子を海外に行かせた』と釈明した。そして、私設秘書を使い、極秘裏に奈那子の行方を捜させたのである。