ふたりのあさこ
とほうに暮れてると、優しそうな女性が声をかけてきた。

「どうしたんですか?」

「部屋の中に入れないんです。慌てていたから、鍵を持っていなくて……」

私は泣きそうになる。たぶん、時間はすぎてる。

鏡の中で亜沙子も、きっと困り果てているに違いない。

私が余計なことしたばっかりに、亜沙子を困らせて、見ず知らずの女性を巻き込んでしまうなんて……。

「どこに住んでるんですか?」

「このマンションに遊びに来ていて、友人を待っているんです。大人しく部屋で待っていれば良かったんですけど……」

私は話しながらも、声はすっかり泣いている。

あーあ、ホントに私って落ち着きがない。
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