深淵に棲む魚


 声が出なくとも、誰かがいなくても、娯楽が満ちていた。

 大型娯楽施設は次々に建設され、箱モノと呼ばれる公共建造物はお金が無くても入館出来た。

 人々の着衣はより鮮やかになって、皆異常に浮足立っていた。

 そんな彼らを見ているうちに、私もその一員になった気がした。

 何も得られてはいないのに、存分に満たされている気がした。


 
 飲み続けた鱗の副作用はいよいよ強まり、私はいつしか自分を人だと思い込むことが多くなっていた。

 同時に、烏帽子の男との全ては、夢か妄想と考える様になっていた。



 あの二人の姿を見るまでは。





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