深淵に棲む魚
交わると言う事
今やすっかり賑わいの消えた古い特設会場で、私は置き去られた自分の絵を見つめていた。
時の止まった廃屋の中でひっそり佇む絵。
この絵は境遇まで私そのものだと、哀しくて愛おしかった。
この絵の前で、何百とも何千ともつかず、私はあの日の再現を繰り返している。
私が絵の前に立てば、同時に仲睦まじい二人も現れる。
絵を眺めるポニーテールの小柄な女と、神秘的な雰囲気を宿す男。
女はポニーテールを揺らし、男にもたれかかる。
そして唐突に言うのだ。
『人魚って、可哀想ね』