深淵に棲む魚
部屋の内側で、ポニーテールの女と男は文字通り交わっていた。
時折獣のような声を上げながら、がっちりと。
人の「交尾」と言う奴だった。
どうなっているのかまるで分からない。
それほど二人はぐちゃぐちゃに絡まり合い、どろりと溶け込むように密着していた。
まるで一つの肉塊のようだった。
奇怪な生物が蠢いている様にも見えた。
そこに言葉はいらなかった。
そんなものより強固なつながりで、二人は通じ合っていた。
言葉なんて、この行為に比べればちっぽけな気がした。