深淵に棲む魚
人
「死んじまったんですかい」
厳つい顔の漁師が横たわる人魚を遠巻きに尋ねた。
烏帽子を被った鷲のような目つきの男は、三味線をぽおんと弾き、首を振った。
船内の皿に盛られた土のようなものからは、もんやり艶めかしい煙が上っていた。
「深い眠りに落ちたのです」
「突いたら起きたりしやせんか?」「心配いらないでしょう」
男の言葉に、他の漁師たちも人魚を取り囲み、恐る恐る触り始めた。