深淵に棲む魚


「私は私のするべきことをしたまでです。頂く義理はありません」

「そいつは、ありがたい」

 厳つい顔の漁師が皆に目くばせし、彼らも無言で頷いた。





「それにしても、この人魚って奴は、一体全体何者なんですかねぇ」



 漁師たちは汚い物を見るような目つきで、人魚を眺めた。

 男はまた弦をぽおんと弾き、すっと目を細めた。




「元は人の女です」






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