深淵に棲む魚


 帰ろう。



 
 そのためにはもう一度、あれを飲まなければならない。

 それで、もう最後だ。



 ベッド脇にあった水差しに手を伸ばし、煽る様にそれを飲み込んだ。

 全身に焼けるような痛みが走り、目の奥がちかっとして再び意識の混濁が始まる。





(あそこへ行こう)

 少し眠ったら、最後にあそこへ行こう。



 そう思った。






< 32 / 161 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop