深淵に棲む魚


 背後で男は言った。



「残念ながらそれ以外、あなたを世の歯車へ戻す方法はありません」と。


「あなたが決心するその時まで、私もここで共に待ちましょう」と。



 飛沫を上げて川に飛び込んだ。

 おしまいだと思った。



 もう二度と、人の世界へは行かないと泣いた。

 涙が出たのはそれが初めてだった。





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