深淵に棲む魚
次の世が来たと言う事は、私が会いたかった男は死んでしまったに違いない。
二度目の涙が流れた。
涙と言うものは妙に温かく、口に入るとじゅわりと涎が湧いた。
水中で流した時には気付かないことだった。
止めればよかったと泣いた。
やっぱり二度と浮上するべきではなかったのだ。
変な気を起こしたらいけなかったのだ。
知らなければ良かったと泣いた。
次の世の訪れを知らなければ、知らないまま永遠に水底で暮らしていれば、私の中であの男も永遠に存在したのに。
あの男を想いながら、今頃どうしているだろうと想い馳せながら永遠に過ごせたのに。