深淵に棲む魚


 最初は三日に一枚、鱗を毟って飲んだ。

 鱗の効き目は約二十四時間で、効果が伸びる時もあれば、一瞬で切れてしまう事もあった。

 それは心の状態に左右され、平常心を保てば長く、躍動や動揺などが起これば、度合いによって短くなった。



 鱗を飲んだ直後は記憶が混濁し、元の姿に戻ると身体は衰弱した。

 回復に少なくとも二日かかった。

 回復したらまたすぐに鱗を飲んだ。

 全ての鱗に力があるわけでもなかった。

 人に変化出来るのは腹の生え際の、銀色の鱗だけだった。

 一度毟った所は二度と生えてこなかった。



 そうして約三日のサイクルで、人の世界に繰り出しては烏帽子の男を探し、川に戻って体力を回復させるを繰り返した。





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