あの時とこれからの日常
「おかえり」
ヒールを脱いで、足裏全体に冷たい床を感じつつ、リビングに入ると狭いキッチンに立つ海斗がいた
「ただいま」
ふわりといい香りの充満する部屋を進んでジャケットをクローゼットにしまいながら海斗の広い背を見つめる
いつだったか
この情報化時代に似合わず、置手紙を残すことが習慣化した
手紙と言っても、裏紙やメモ帳に一言書きおく程度なのだけれど
でも、海斗の整った文字を見るたびに、
病院から呼び出しがかかったとか
夕方には帰るとか
そんな内容なのに不思議と笑みがこぼれていた
海斗曰くさびしがり屋の自分の特性をよくとらえた対処法だ、としるふは一人感心した
約束をしたわけでも取り決めをしたわけでもない
無言で出来上がった二人だけの習慣
それが、そんな些細なことが一つ、二つと増えるだけでうれしい
なのに時々感じる不安やもやっとした気持ちは何なんだろう
海斗がこうしてキッチンに立っていてくれることだって、もしかしたらすごいことかもしれないのに
ただ「どこにいってたの」なんていう言葉がなかっただけで
ため息をつきたくなるのは、わがままだろうか
ヒールを脱いで、足裏全体に冷たい床を感じつつ、リビングに入ると狭いキッチンに立つ海斗がいた
「ただいま」
ふわりといい香りの充満する部屋を進んでジャケットをクローゼットにしまいながら海斗の広い背を見つめる
いつだったか
この情報化時代に似合わず、置手紙を残すことが習慣化した
手紙と言っても、裏紙やメモ帳に一言書きおく程度なのだけれど
でも、海斗の整った文字を見るたびに、
病院から呼び出しがかかったとか
夕方には帰るとか
そんな内容なのに不思議と笑みがこぼれていた
海斗曰くさびしがり屋の自分の特性をよくとらえた対処法だ、としるふは一人感心した
約束をしたわけでも取り決めをしたわけでもない
無言で出来上がった二人だけの習慣
それが、そんな些細なことが一つ、二つと増えるだけでうれしい
なのに時々感じる不安やもやっとした気持ちは何なんだろう
海斗がこうしてキッチンに立っていてくれることだって、もしかしたらすごいことかもしれないのに
ただ「どこにいってたの」なんていう言葉がなかっただけで
ため息をつきたくなるのは、わがままだろうか