あの時とこれからの日常
「ああ、さっきの」

神宮寺の言葉にようやく海斗は合点がいったようだ

「そ。いい度胸よね、うちの姫君を怒らせるなんて。立花先生の機嫌ひとつで医局内の雰囲気がガラッと変わるって言うのに」

これが海斗との喧嘩だったら、ああまたか、と温かい目で見守ることもできるのに

あそこまで憤慨されるとどう対処していいかわからない

「気にしなくていいって言ったんですけどね」

横山会長の言葉に見る見るしるふの眉が吊り上っていったことは隣にいた海斗も知っている

止めなければ掴み掛らんばかりの憤慨様だったので横山会長に気が付かれないように、黙っていろ、と視線を送ったし、

横山会長がいなくなった後で別に気にしなくていいからと言い置いたのに

あの真っ直ぐは

「あなたが気にしてないことにも怒ってるのよ、彼女は」

「立花先生、そういうこと大っ嫌いですからねー」

しかも黒崎先生ばかにされちゃ、仕方ないですねー

飯田があきれ交じりに苦笑する

「あれだけ隣で怒られたらこっちが怒る気失せますよ」

「ま、あなたみたいに受け流せない純粋さが立花先生のかわいいところでいいところなんだけど」

だからこそここに連れてきたのだ

「で、医局長に八つ当たりしにいった姫君はどこに?」

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