あの時とこれからの日常
ちなみに、絶妙なバランスを保つそれを積み上げたのは、海斗だ

甘いものが苦手なくせに、毎年しるふの部屋にこうやって山を作るのは

海斗の役割となっている

本人も楽しんでやっているらしいので、よしとしよう

腕を組んでじっとチョコを見つめていると、ふっ、と慣れ親しんだ香りが辺りを漂う

視線を向けるとしるふのつぶやきを聞き流していた海斗が、

テーブルの上に二つのマグカップを置き、しるふの足元に腰を下ろす瞬間だった

はあ、となんともなしに息をついたしるふもそのまま腰を下ろす

「ねえ、」

マグカップを両手で包んで、温みながら海斗を呼ぶ

隣で紅茶を口に含んでいた海斗が視線だけよこしてくる

「…あれ、上からしか食べられないよね」

「いや、ジェンガのノリで引き抜けば崩れることはない」

ちなみにどんな味が入っているかわかるように箱が裏返してあるのは、

海斗の心使いだ

「海斗がやってよ。私そういうの苦手」

引き抜けば崩すだろうし、崩したものをまた積み上げるだけのセンスは持ち合わせていない

と、去年海斗に指摘され、判明した
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