あの時とこれからの日常

新しく、信次の秘書矢吹の知り合いだという聖という若い秘書を海斗用に雇ったり、病院の一角に副医院長室を設けたり

海斗が正式に黒崎病院を継ぐ意思を見せてからいろいろと変わった

信次は少しずつ医院長という座から退きつつある

そしてその分海斗にかかる負担は増えるのだ

これからは海斗が黒崎病院の経営を担っていくのだから

「周りとのつながりは大切だぞ。薬がなければ対処できないし、機器がなければ手術もできない」

「だからって下心見え見えの輩と顔を合せるほど馬鹿じゃあないんだよ」

どうも気の合わない相手だと態度が冷たくなる海斗である

「まあ、そういうとは思っていたんだが…」

ふうと息をついて背もたれに寄りかかる

と、

「医院長」

ドアが音もなく開き、秘書の矢吹が顔を覗かせる

「お連れしましたよ」

短い言葉で信次は了承したらしく、少し安堵したように微笑む

訳が分からず海斗が見守る中、矢吹にエスコートされてきたのは

「立花?」

結婚してもERに居続ける、一応新妻、立花じゃなかった、黒崎しるふである