あの時とこれからの日常
「何がいいんだよ。時間の無駄だって」

すぐさま海斗からの抗議が入る

「私さ、一度海斗に群がるお嬢様たちをしっかりと蹴散らしておく必要があるなって思ってたの」

だからいい機会

にっこりと見上げてくるしるふに、自然と眉が寄る

「腹くくったんでしょー、海斗くーん。面倒くさがってたら駄目だよ」

「そういう問題じゃねーんだよ」

はあ、とため息が漏れる

「そういう問題。これでも一応副医院長の妻だもん。たまには表に出ないとねー」

ほけほけと笑うしるふに一瞥を投げかけ、海斗は不機嫌そうに口の中で舌打ちをする

祝宴会に出るということよりも、この笑顔に敵わない自分に対してだ

それとそれをわかられていることに対しても

しるふが出る気満々な時点で、海斗に反論の余地はない

まあ、確かに腹はくくったが

時間が惜しいこの頃、明らかに充実した時間を過ごせないことが分かっている祝宴会なんぞに出てる余裕なんぞないのだ

「ね?出るでしょ?海斗」

覗き込むようにしるふんのブラウンの瞳が向けられる

「…ああ、心行くまであいつらを蹴散らしたらいいさ」

ため息交じりに妥協した海斗に、信次としるふの満足そうな笑みが向けられた
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