あの時とこれからの日常
「……」

暗闇から突然引き上がる感じ

唐突に意識は覚醒するものだ

うっすらと瞳を開けると窓を通り過ぎる雪が目に入ってきた

どこだろう

家のベットは頭上に窓があるので寝たままでは外の景色は見えないはず

しかもここまで白を基調とした部屋ではない

思い出そうと瞳を細めると

「しるふ」

凛とした耳通りのいい声に呼ばれた

ゆっくりと首を動かし、視界に入ってきた姿に

「…かいと」

そっと呼びかけると、海斗がほっと肩を落とすのが分かった

音もなく海斗の腕が伸びてきて、優しくほほに触れる

その瞬間、自分の頬がすごく冷たいことに気が付いた

どうしたんだっけ

ふとまた疑問が湧いてきて

「海斗、ここ、どこ」

ささやくような小さな声で問う

「黒崎病院産婦人科」

放たれた言葉を頭の中で復唱する
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