あの時とこれからの日常
と、

「ただいま」

ドアの開く音がして顔を向けると妹の黒崎朝灯がふくれたボストンバック片手に立っていた

「おかえり」

母親そっくりのブラウンの瞳が頷き、鎖骨にかけてきれいにまとめられた髪が揺れる

「おかえり。朝灯も紅茶―」

飲むか、と最後まで口にすることはできなかった

「父さん!!ちょっと!!大変なんだってば!!」

キッチンから振り返った海斗に朝灯がばたばたと近寄る

「どうした。また男と別れたのか」

その勢いを全く気にせずにひょうひょうと聞き返せるところ、ホント海斗らしい

「ああ、あいつなら二か月前にひっぱたいて振ってやったわ。どうして世の中には根性とデリカシーのない男ばっかりなの?」

どこかにいい男いない?

朝灯の言葉に海斗が笑う

「良い性格してるよな、朝灯は」

「まあね。それよりさ、どうすればいい男は見つかると思う?私としては父さんみたいな大人な男が好みなんだけど」

「大物を釣り上げたきゃ、それだけの女にならないとな」

「そこかー。これでも結構いい女なつもりなんだけど」

「朝灯は理想高そうだからな。周りが追いついてないんだろう」

どうせ精神年齢は男の方が下だ



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