あの時とこれからの日常
3 二年目
向き合うための一か月
「ほい、荷物」
玄関にドサッと音を立てて黒いカバンが置かれる
「ああ、ありがとう」
「いつ帰ってくるんだっけ」
壁に掛けてある車の鍵を取る海斗
「一カ月後」
答えが端的なのは相変わらず
「そんなに何するの」
「学会をやって、シンポジウムやって、それから研究発表。ついでに少し研修」
それで一か月
「さすが、って言った方がいいのかな。それともお疲れ様っていた方がいいのかな」
付き合って丸一年
時々出張のある海斗は、国際級の学会に呼ばれたりもする
普通に外国人も来るし、英語で発表なんてざら
そこに涼しい顔をして座って、しかも空いた時間に外国人と何食わぬ顔で会話しているんだからさすがだ
実はフランス語だったかドイツ語だったかも話せると小耳にはさんだことがある
「倒れないでね」
「その言葉、そのままそっくり返す。しるふもあんまり無理するなよ」
くしゃっと柔らかな髪をひと撫でしてから荷物を持ち、部屋を後にする
いってらっしゃーい、としるふの声がドアの隅から聞こえた
玄関にドサッと音を立てて黒いカバンが置かれる
「ああ、ありがとう」
「いつ帰ってくるんだっけ」
壁に掛けてある車の鍵を取る海斗
「一カ月後」
答えが端的なのは相変わらず
「そんなに何するの」
「学会をやって、シンポジウムやって、それから研究発表。ついでに少し研修」
それで一か月
「さすが、って言った方がいいのかな。それともお疲れ様っていた方がいいのかな」
付き合って丸一年
時々出張のある海斗は、国際級の学会に呼ばれたりもする
普通に外国人も来るし、英語で発表なんてざら
そこに涼しい顔をして座って、しかも空いた時間に外国人と何食わぬ顔で会話しているんだからさすがだ
実はフランス語だったかドイツ語だったかも話せると小耳にはさんだことがある
「倒れないでね」
「その言葉、そのままそっくり返す。しるふもあんまり無理するなよ」
くしゃっと柔らかな髪をひと撫でしてから荷物を持ち、部屋を後にする
いってらっしゃーい、としるふの声がドアの隅から聞こえた