あの時とこれからの日常
何度か弾いくとほぼ完ぺきに弾けるようになった

弾きながらしゃべる余裕も出てきた

「この歌手、しるふ好きだよな」

しるふのアパートにあるCDを思い出す

「うん。音取れてるし、歌詞の意味が好きなのよねー」

あとで違うのも紹介してあげるよ

「…そりゃどうも」

余り有りがたくないような気がしないでもない…

生地をオーブンに入れ終わったしるふが、ピアノの近くに寄ってくる

「やっぱり海斗はピアノうまいね」

「しるふだって弾けるだろ」

「私はたしなむ程度ね。海斗ならさ、ピアニストでもいけたんじゃない?ちゃんとした先生のとこでちゃんと習えばさ」

ああ、でもそしたら海斗と出逢ってなかったか

それは頂けないなー…

つぶやきには少しさびしそうな響きがあった

それを聞き取って海斗が薄く笑う

確かに、そんな未来ならいらない

タランー

最後の音を奏でる

「おお!!コンプリート!!」

ぱちぱちと拍手しつつしるふがうれしそうに笑う

こんなことでしるふが笑うなら安いものか

そう思いながらそっとその笑顔を見つめる
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