あの時とこれからの日常
ぶつぶつと言葉を並べていたけれど、最終的に言うことが思いつかなくなったのかしるふは再び息をつく

やっぱり少し震えているような気がする

「泣きたいなら泣いて良いぞ」

付き合ってやるから

頑として泣き虫であることを認めない、意地っ張り

優しく頭を撫でていると、小さく肩が震えはじめた

人一倍患者を助けたいという思いが強い分、受けるダメージも多い

無力さを感じるのはしるふだけではないけれど、両親のことは今でもどこかに闇を落としている

しるふが患者を助けられなかった、その事実に弱いのは、そのせいだ

決して自分の能力や医療に限界を視ているわけではないけれど、どこかあきらめというか割り切りのある海斗と

まだ割り切りきれていない、純粋さのあるしるふでは、同じ状況でも立ち直るまでの時間が異なる

そして、この意地っ張りはそれを内側に溜めこむのだ

平気な顔をして笑いながら、心の中では自分の無力さに泣いている

本当、気にかけていないとどこでどんな輩に引っかかるかわからないし、いつ潰れるかもわからない

でも、それでもしるふを育てると決めた時に誓ったのだ

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