gardenquartz 小さな楽園
ジョナサンはこの時僅か12歳。
重い武器を一日中背負って、体は疲労で鉛のようだった。


夜中、恐怖で眠ることが出来なかった。
木にもたれ、顔を上げるとキラキラと星が輝いていた。

ジョナサンはディーンとの楽しかった日々を思い出し、泣いていた。


帰りたい…。


ジョナサンはたった一人で敵陣を壊滅状態にした。
残るは後一人、それさえ終われば、また、明日を迎えられる。
生きていける。


ジョナサンは燃え盛る煙と地面に転がっている死体を気にも止めず走り、最後の一人を仕止める為に必死だった。


建物の影に隠れ様子を伺おうと、顔を出した途端、眉間に銃が当たった。
恐怖で動けなかった。

銃を放し、両手を挙げてゆっくり相手の前に出て行った。

相手の顔はゴーグルで見えない。
銃は眉間の真ん中に当たったまま暫く両者は動かなかった。


どうやら相手は引き金を引くのを躊躇っている様子だった。
ジョナサンはその隙を見逃さなかった。


素早く動きワイヤーソーで相手の首を引き千切った。
ジョナサンは生きている自分を喜んだ。
笑みが溢れる。
俺は勝ったんだ!!
俺は生きて!!生き続けてやる!!


最後の一人の首を蹴った。
ゴーグルが外れて顔が見えた。


その時ジョナサンは固まった。
見覚えがある顔だった。


死んだと聞かされていた、写真でしか見たことの無い、父親の首が転がっていた。


『嘘だろう?』
ジョナサンは声に出して言った。

『嘘だ…。』


『嘘だ!!』


最後は叫んでいた。


ジョナサンはゆっくり父親の首を抱き締め、泣いていた…。
そして、自分の目を自分で潰した。
そして、気を失った…。



ジョナサンは真っ白い部屋の真ん中に置かれたベッドの中で目が覚めた。
潰した筈の目なのに、視界が広がる。


扉の開く音がして、俺を【買った】男が白衣を着た数人の人物と一緒に入ってきた。


男は俺の様子を見て、横の白衣の一人に話しかけた。
『見えているのか?』

『はい。手術は成功いたしましたから。見えてはいますが、精神面でかなりダメージがありますが、それも問題ないと思います。』

白衣の奴は機械的に男の質問に答えた。


『結構。よくやった。』
男は白衣に言って、ジョナサンに近づいて言った。


『お前もよくやった。お前の目玉は父親からの贈り物だ。2度とするなよ。
いいか、よく聞け。
欲しいものはねだるな。自分で奪え。
自分のモノにならなければ、破壊してしまえ。そうすれば、それは2度と誰かの手に渡る事は無い。
いいか。忘れるなよ。』



そう言うと、男は部屋から出て行った。


ジョナサンは男の言った言葉を頭に刻み込んだ。



欲しいものは奪え。然もなくば、破壊しろ…。



ジョナサンはその日からもう、泣くことも、心から笑うことも無くなった。






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