gardenquartz 小さな楽園
俺はあまり愛想笑いが出来ない。
でも、碧さんが居るだけで自然と笑みが出る。現金な自分だが客には今のところ嫌われてはいないらしい。

シンクに貯まった食器やグラスを素早く洗い、簡単なカクテルや酒などを作りテーブルに運んだり、ヘレンに渡したり。


店は深夜なるともっと混んだ。
何処から湧いてくるのか店内は客のざわめきとジュークボックスの音楽でごった返す。

チャーリーとヘレンに素早くサンドイッチを作り代わり番こに夜食を渡し自分はフォローに入る。

その間シェーカーを振るのは碧さんだ。
碧さんのシェーカー捌きはお世辞抜きでカッコいい。
素早く酒と氷を入れてシェーカーを握った両手を顔の高さまで上げて美しいリズムを刻む。
動きに無駄が無く、スマートだ。
カクテルグラスに美しい色のカクテルが注がれる。


俺はそれをテーブルに運ぶ。
連係プレーが出来上がっている。


ガシャーン!!


突然凄まじい破壊音が店内に響き渡った。

その後直ぐに凄まじい罵声が店内のざわめきを静かにさせた。


控え室に居たチャーリーが飛び出して来た。
俺はチャーリーとアイコンタクトをして騒ぎの中心のテーブルに向かった。


二人の酔った男と女が一人男の間に入って必死に喧嘩を止めようとオロオロしていた。
男は二人とも外国人で赤毛と金髪の白人だが、何処か荒んだ感じでマトモな仕事はしてそうには見えない。

女の方はブランドを身に付けてはいるけれど統一感が無く、かえって下品になっている。多分水商売だろう。


赤毛はヒップポケットからナイフを取り出した。
俺はとっさに奴の手に蹴りを入れナイフを落とし右の拳を左頬にお見舞した。
赤毛はヨロヨロと隣のテーブルに上半身を倒した。

チャーリーはその間に金髪のすねを思いっきり蹴り、体を屈んだ所へこれ又足で顔面に蹴りを入れノックアウト。


俺達は赤毛と金髪を店から放り投げた。
女は泣きべそをかいて財布からお札を握り出してチャーリーの手に握らせ、
『これで勘弁して!後で碧子さんには改めて謝りに来ると伝えて下さい。ごめんなさい!』


そしてノビた男達の所へ行った。

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