gardenquartz 小さな楽園
俺が絵梨佳が安心して預けられる人物を頭に浮かばせたら一人しか浮かばなかった。

碧さんだ。


俺は落ち着いた絵梨佳をソッと動かし碧さんの店に連れていった。
店の前まで来たら調度碧さんが蹄鉄をドアにかける時だった。


『碧さん!!』

俺は大きな声で名前を呼んだ。
絵梨佳が声の大きさで体をビクンとさせた。

碧さんは俺を見て横の絵梨佳も視界に入ったらしく蹄鉄を外して俺達を素早く招き入れた。

俺達は倒れ込むように店の中に入った。

碧さんはドアの内側に蹄鉄を掛けて、ドアの鍵をかけた。

店のフロアの奥の長いソファーに絵梨佳を寝かせる様に俺に言って、碧さんは氷と薬箱を急いで持ってきた。


ソファーに横になった絵梨佳の側に座り込みソッと体の傷の具合を見ていた碧さんが振り向きもせず俺に言った。


『和樹。あなたは少しの間控え室に行ってなさい。大丈夫。傷は私が診るから。そのつもりで私の所に連れて来たんでしょ…。任せて。』



俺は『お願いします。』と言って控え室で傷の手当てが終わるのを待った。


時間がノロノロ過ぎて行く、あんな傷は女の子で見た事は無い。全く手加減せずに殴ったり蹴ったりした怪我だ。

俺は怒りが少しずつ心の中で広がっていった。

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