gardenquartz 小さな楽園
修利と話をして別れた後、俺は夕陽で赤い街並みの人波に紛れて家路についた。

街の風景が車窓から流れて行く。明日の夜には俺達は違う土地に行く。

不思議と心はざわついていない。
寧ろ静かで客観的に俺自身を見ている感じさえする。


この夏。
俺はゲームをする事で多分劇的に変わる予感がする。
否、絶対的に変わる。
修利は変わるのかな?


窓に流れる風景が青紫に変わってゆく。


俺は電車を降りた。


駅から家まではバイクで帰る。
50ccのバイクのフレームにエンジンは中型のを組んでいる。
つまり、一見50ccだけど中身は中型と変わらないってこと。
修利と俺で組み立てた自慢のマシン。
俺の愛機。

太いチェーンで盗まれない様に繋いであるのを外してバイクに跨がる。
キックでエンジンをかけると振動が伝わる。
早く中型免許を取りたい。そしたら修利と海までツーリングしたい。

バイクを走らせた。


沈む夕陽に向かって…。

真っ直ぐ帰る気になれなかったから、駅と家の中間辺りにある公園にバイクを止めた。
小高い公園で遊具も有るし、見晴らしも良いし、何より小高いので町が広がるのが見下ろせる。

時々一人で考え事とかボーッとしたいときに来る。
昼間はきっと子供が沢山来るんだろう。
砂場に遊び道具が転がっていた。


俺は町が見下ろせるベンチの横にバイクを止めて腰をおろし煙草に火をつけた。

太陽はもう沈み地平線にホンの少し赤いだけで、もう辺りは薄暗くなっていた。
公園の外灯がついた。

俺は静かに時間が流れるのを感じていた。
煙草がジジジと燃える小さな音まで聞こえる。

俺は時々下らない事を考える。

例えば、宇宙は無限なのか?人は不死にはならないのか?

なんて下らない事。それをマトモに相手をしてくれたのは修利だけだった。

まぁ。話したのは修利だけだったけど。
アイツとはこの先も、ずっとダチでいたい。
面と向かって言わないけど、きっとアイツも同じ気持ちでいてくれるだろう。


俺は煙草を足下に落とし足で火を消した。
辺りはもうすっかり暗く外灯が公園を照らしていた。


バイクを道に引いていき再びエンジンをかけて家に向かった。



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