gardenquartz 小さな楽園
『出来た!!』

修利の声で俺はハッとした。
どうやら眠ってしまっていたらしい。

修利の手に握られた俺のナイフを見ると、
明らかに切れ味が良さそうになっている。

修利は側にあった分厚いバイク雑誌を掴み
ナイフで斬り込んだ。
まるでバターを切ってるみたいに抵抗無く雑誌は2つに別れた。


『スゲーな!』


修利は得意気にナイフをクルクル回して柄に納めて俺に寄越した。


俺はナイフを受け取ると自分のバッグにしまった。
『街に出て時間を潰すか…。』

俺達は荷物を持って家を出た。
空には星が輝き始めていた。


都心に向かう列車はガラガラだった。
反対方向からすし詰め状態の列車がすれ違う。
皆無表情に見えた。

修利も反対側の列車を見ていた。

俺はガラガラの車内を見渡した。
端の方に着飾った女が鏡を見ながら化粧をしていた。
反対方向を見ると若い男がイヤフォンをしながら寝ていた。


修利が口を開いた。
『お前、碧さんからゲームの内容教えてもらったのか?』

俺は溜め息混じりに答えた。
『詳しいことは何も話してはくれなかった。だけど碧さんも一緒にゲームに参加するみたいだった。

俺等と同じチームらしい。碧さんの口調だと初めてじゃなさそうだったな…。』


『そか……。』
修利はアーミーバッグの紐の端を手で弄りながら答えた。


『まぁ。碧さんの側に居れば何とかなるんじゃね?』
修利の肘を軽く小突いて軽く流した。


修利はニヤリと笑い俺の肘を小突き返した。

列車は都心に向かい夜のネオン溢れる街に向かって走った。
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