gardenquartz 小さな楽園
俺はワクワクしていた。常連の俺でさえ今だに入れなかった奥の部屋に入れるのだから。

碧さんはフロアの奥の細い黒い廊下へ続く紅いサテンのカーテンを開けた。

俺達は目を見張った。
思ったより長く続く廊下、壁は漆黒なのでまるでブラックホールみたいに見えた。
碧さんが灯りのスイッチを入れた。

アンティークの電灯がほんのり廊下を照らした。

目が暗闇に慣れると廊下と部屋の扉らしきモノが見えてきた。

扉は全部で3つ、そして突き当たりに1つ。
1つの扉の間隔がかなりある。


碧さんは扉の二つ目の前まで来ると扉の脇の黒い蓋を開けて数字の並んだボタンを数回押した。



カチリ。


ロックが外れた。
扉を開けて俺達に向かって言った。
『さぁ。入って。』


俺達はソロリと中に足を踏み入れた。

中はまるで中世のヨーロッパ調の造りでタイムスリップしたみたいだった。

豪華な壁に大理石の彫刻を施した電灯。
天井には豪華なシャンデリアにベルベットのソファ。
大理石のデカイテーブル。
床も大理石。部屋の奥にはカウンターバーがあり、横に飾り扉がある。



俺達が呆気に取られている背後から碧さんの声がした。

『時間までこの部屋で休んでて、トイレやシャワーは奥の扉を開ければあるし、飲み物とかはカウンターバーにあるから。』


俺は振り替えると碧さんが扉を閉めようとしていた。
俺は慌てて碧さんを呼び止めた。
『待って。碧さんは?』


碧さんの手が止まり答えた。

『私は使いの人を出迎えるから外に居るわ。心配しないで。私も一緒だから。』


そう言うと扉が閉まった。


カチリ。
鍵がかかった音がした。

つまり俺達はこの部屋に綴じ込まれた訳だ。


修利を見ると………。


ベルベットのソファでピョンピョン跳ねて遊んでいた!!
緊張感が全く無い。

『お前、よく平気だな。』
俺は今度はカウンターバーを漁る修利を見て言った。


冷蔵庫からフルーツを取り出し食べながら修利はキョトンとして答えた。

『何で?今更ジタバタしてもしょうがないじゃん。和樹も食う?』


差し出された果物はドラゴンフルーツだった。
俺は溜め息をつきながらドラゴンフルーツを受け取るとナイフで剥いてかじりついた。

修利は肝が据わってるのか、楽天的なのかたまに解らなくなる。
まぁ。修利の言う通りなんだけどね。



この部屋に時計はなかったから自分の腕時計を見た。

後、15分。






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