gardenquartz 小さな楽園
『私は眩しさで目が覚めた。
強い光が目障りだった。

手を自分の顔に持っていこうと手を動かそうとしたら、動かない。私は手足を固定されていた。辛うじて顔の向きを左右に動かせたから当たりを見回した。

鏡張りの部屋で自分の体を見て驚いたわ。私の体から何本も管が付いて、手足は革ベルトで固定されていたから。私はあらゆる事を喚き散らした。

ここから兎に角逃げたかったから半狂乱だった。すると、白い扉から白衣を着た女とさっきの男が入ってきた。

私は罵ったわ。女の方は管の先の機械のデータをメモしてた。男が私の側まで来た。

私はまだ罵っていた。男は無表情で私を見ていた。

やがて、私は疲れて罵るのを止めて男の顔を睨んだ。全身で男の視線を拒絶するように睨んだわ。』


俺は碧さんのその時の姿を想像して正直ビビった。この平和な日本では有り得ない事だ。俺だって喧嘩はしょっちゅうだったが、命の危険まではまだ経験したことは無かった。
俺達と碧さんでは次元が違う。


『男が口を開いて私に言った。お前はこのままでいたら死ぬ。あそこでほっといても良かった。

あそこなら死人なんて見馴れているだろうし、お前が死んでも誰も気にも留めないだろう。』


碧さんの煙草の灰がテラスに落ちた。

男の事を思い出しているのだろう。

『この管を外せばお前のクズの様な人生に幕を降ろせる。お前はこのままクズとして死にたいのか?』



男の手が機械のボタンに手をかけた。

『………………………イヤ。』

『私は死を拒んだわ。男が言った様にクズとして死にたくなかった。あんなスラムで一生を終えたくなかった。』



『イ…ヤ…。
私の敗北感と死への拒否が男への降伏の言葉を言ったの。』



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