gardenquartz 小さな楽園
碧さんとマントの奴の距離が1メートルを切った位になった時、マントの奴がいきなり、しゃがみこみ片足を地面に滑らせた。

碧さんは相手の動きを読んでいたみたいで
足の長さのホンの数センチ後ろに下がって
カワした。


ギャラリーはさっきとは違い、誰も煽ったりせずに静かにやり合いを見ていた。


マントの奴は素早く体制を立て直そうと動いた瞬間、碧さんが動いた。
碧さんは片足の膝の外側を蹴りマントの奴はバランスを崩して、手を地面に付いた所に、碧さんの足が手の甲を踏みつけた。


本当に僅かな出来事で、何が起こったのか
理解するのに時間がかかった。


『参った。』
マントの奴が静かに言った。


俺と修利は驚いた。
女の声だったからだ。


碧さんはゆっくり手を踏みつけた足を退けた。
マントの奴は立ち上がり、フードを後ろに開いた。
真っ赤な赤毛で浅黒い皮膚の女の顔がソコにはあった。
しかし、眼光は鋭く、しなやかな獣の様な感じを受けた。


他のギャラリーの奴等は一斉にどよめいた。


碧さんはスッと側に寄り、声をかけた。
『ウチに来ない?』
マントの女はニヤリと笑い頷いたが、隙は微塵も無い。


ギャラリーが口惜しそうに散り散りに去っていった。


俺と修利は碧さんの側に寄って行った。
碧さんが右手をマントの女に差し出した。
女も手を出し、握手を交わした。


交渉成立。


女の口が動いた。
『貴女、碧木(みどりこ)さんでしょ?』

碧さんは頷いた。

マントの女は今度は警戒心無く笑って言った。

『噂は聞いてる。私はキャット。貴女と同じくアソコで訓練を受けた、謂わば後輩です。宜しく。』


碧さんは表情を変えず、頷いた。

キャットはマントを脱いだ。
スリムジーンズにブラックの編み上げブーツ、右の太ももにバカデカイサバイバルナイフを携えていた。

髪は三つ編みをして、その髪を首に巻いていた。


瞳の色はブラウンだが、鋭い目付きで隙がない。


キャットは俺達にも右手を差し出し、握手を交わした。

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