gardenquartz 小さな楽園
俺と修利の部屋が作戦会議の場所になった。

ディーンはテーブルに地図を広げた。

『これが、この島の地図で明日配られる地図と同じものだ。ここがこのコテージの場所。そして、ここが本部の場所だ。』

ディーンは指で目印の所を指差しながら言った。


『坊や達。地図は今夜中に細部まで覚えておけよ。これは確かにゲームだが、半端なお楽しみのゲームと勘違いするなよ。』


『インカムが明日各チームに配られるから、これをそのインカムに取り付けてから使ってね。』

キャットが3センチ四方の小さな機械をバラバラとテーブルに広げた。

『これは、盗聴防止のオモチャよ。』


ディーンが窓際で外を見ている碧さんを見た。
碧さんは、視線に気付くと、テーブルに近付いてきて言った。

『もし、インカムが使えなくなったときの為に、暗号を作りましょう。』

『みんな、好きな数字は?』

俺は5、修利は3、キャットは7、ディーンは4、碧さんは0。
各々番号を決めた。

『そしたら、進むは英語のgoでG、左はleftでLとして、英語の頭文字で表すの。』

つまり……。

もし、俺と碧さんが右に進むとしたら、
木の幹に
【50RG】と刻めば良い。



一通りチームのみの段取りが形になった。



ディーンが溜め息をついて煙草に火を着けながら言った。

『オチビちゃんよ。今回のゲームは何時もと違う事は分かってるんだろう?』


碧さんも煙草に火を着けながら答えた。
『ええ。恐らく今回は奴が出てきてるんでしょ?』


俺と修利は話が見えず、ディーンと碧さんの会話を静かに聞いていた。
キャットは知っているみたいだった。


ディーンが話を続けた。

『あぁ。今回のゲームで奴はオチビちゃんを手に入れたいらしい。それに伴って何時もの何倍もの金が動いている。』


碧さんは溜め息混じりに煙を吐き出しながらディーンに言った。

『私は何時になったら自由になれるのかしら…。』

ディーンは哀れむような目で碧さんを見ながら口を開いた。

『俺は今回でこのゲーム自体を破壊してしまおうと思っている。』


碧さんとキャットは驚いた目でディーンを見ていた。
キャットが慌てて言った。

『本気で言ってるの?ディーン…。そんなことしたら只では済まないわよ。』



ディーンはキャットにウインクをして、
ニヤリと笑い言った。

『赤毛のオチビちゃん。俺は元々傭兵だった。何時かは何処かで野垂れ死ぬ運命だ。
それなら、死ぬ前にドデカイ事をしてから散りたいね。』


碧さんは哀しそうな目でディーンを見ていた。


俺は胸にズキリと痛みが走った。
そして、自分の能天気で無力な事を目の前に突き付けられ、言葉にもならなかった。



修利が怖ず怖ずとディーンに話しかけた。

『ゲームとは関係無いんだけれど、聞いても良いですか?』


ディーンが修利を見て言った。
『何が聞きたいんだい?坊や。』


修利は小さな声で言った。
『アメリカの軍にも居たことがあるんですか?』

ディーンは少し優しく笑い答えた。

『あぁ、居たよ。俺は何処にでも現れて、そして、何処にも居てはイケない存在なんだよ。』


修利は確かめる様にディーンに言った。

『俺のオヤジはアメリカ兵だったらしいんだけど、アルフレッド・ショーンって知ってますか?』


ディーンは少し驚いた表情で答えた。

『アルフレッド・ショーンって、アルフィの事か?あの、金髪の!!坊やを見た時、誰かに似てると思ってたが、アルフィの息子か!!』



世間は意外と狭いらしい。




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