gardenquartz 小さな楽園
『キャット。あなたは何であの施設に入っていたの?』


キャットは真っ直ぐ前を見て、答えた。

『私、元々この世に必要な人間では無かったの。私は人間に造られた人の形をした化け物よ。』


碧木はキャットの言った意味が分からなかった。
キャットは話を続けた。

『私は、人工受精で産まれた人間なの。しかも、実験的にね。』

キャットは右手首をめくって手首の内側を碧木に見せた。
ソコには数字で8と書かれていた。

『私は、8番目の実験でこの世に産み出された人体実験の産物。』


碧木は黙って聞いていた。


キャットが話の続きを始めた。

『私は、幼い頃からあらゆる訓練を受けたわ。逆らう事など知らない世界で。そして、事あるごとにあなたの名前を出されて、比較され、育った。』

碧木は黙ってキャットの話を聞いていた。

『私は、私以外の人間を人間とは思っていないわ。でも、碧木は私に不思議な感情を与えてくれた。
でも、その感情はアノ施設には不必要なモノだった。そして、私は落ちこぼれ、所謂不良品でお払い箱になったの。』


碧木は静かにソッとキャットの側に近付いた。
まるで、獰猛な獣を宥めるように、そしてキャットを優しく抱き締めた。


キャットの中の何かが弾けた。



キャットは碧木の胸に顔を埋め声を出さずに泣いていた。
碧木は、キャットが泣き止むまで何時までもキャットの背中を優しくさすり、抱き締めていた。







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