gardenquartz 小さな楽園

Lastcheck

遠くで誰かが俺を呼んでいる。
俺は声のする方向にがむしゃらに走っているが、真っ白な空間の中、何処をどう進んでいるのか分からなくなっている。


また、声がした。
『和樹！！』


俺は目を開けた。
修利が俺の顔を覗き込みながら体を揺すって起こしていた。

『時間だぞ。起きろ。』

俺は気だるそうに答えた。
『あぁ。分かった。』
ゆっくりベッドから体を起こし辺りを見回す。
ディーンが居ない。
俺は修利に聞いた。
『ディーンは何処だ？』

修利はタオルを肩にかけシャワーを浴びに行く最中に答えた。
『知らない。俺が起きたときには、もう居なかった。』


俺はベッドから起き上がり、バンガローの出入り口を開けた。
ディーンが扉の数メートル先に腕組をして佇んでいた。

『ディーン。どした？』

俺はディーンがムスッと立っていたので、聞いた。
ディーンは顎を上げて見せた。
俺はバンガローの扉を見た。


バンガローの扉に死んだウサギの耳にナイフが刺さってぶら下がっていた！
俺はギョッとした。


ディーンは歩いて扉まで来ると、ナイフを抜いてウサギを抱いて、林の中に消えた。


俺達は狼の群れの中に放り込まれたウサギなんだ。
あれは単なる脅しで、これから始まるゲームはこんな脅しが子供騙しに思えるほどになるだろう。


一気に目が覚めた。
俺は本当の標的の碧さんを何処まで守りきれるか分からないが、全力で応戦しなければ、ならない。


ディーンが林から戻り扉を開けていた俺の横をスルリとすり抜け部屋の中に入って行った。
俺は辺りを見回し扉を閉めた。