gardenquartz 小さな楽園
その頃、キャットと修利は、キャットが見つけてきた新しい敵陣の近くの草むらに潜んで様子を伺っていた。


こちらのチームは女ばかりのチームでかたまっていた。
アチコチで碧さんの噂話をしていた。


キャットが修利に囁いた。
『いい?修利。男より女の方が冷静で鼻が利くのよ。女だと思って手加減するんじゃないわよ。ヤらなきゃ。ヤられるわよ。』


キャットがベルトのバックルから細いワイヤーを引っ張りだし、近くの木に結びつけて足音を消してワイヤーでテントを囲むように張り巡らしてきた。
ただし、1ヶ所を除いて。その場所は真っ直ぐ進めば、最初に俺達が見つけたチームの場所に通じていた。


『修利。ここからは別行動よ。私がペイント爆弾をあの焚き火に投げ入れるから、散り散りになって逃げる筈だから、ワイヤーにかかった奴等だけを仕留めて。分かった?』


修利は頷いた。


『相手が泣いて頼んできても、容赦なく撃ちなさい。それが、このゲームのルール。』


キャットが焚き火の火を爛々とした目で睨みながら修利に言い聞かせた。


そして、キャットは修利に散れと合図を送った。
修利は音を立てず草むらに入っていった。


キャットはワクワクしていた。
自分が必要とされているこの場所、この瞬間が喩えようもなく気分を高揚させていたから。


何より碧子に自分が必要とされている事に喜びを覚えた。

誰かに必要とされている事が、こんなにも嬉しいことだと初めて知った。



キャットは爆弾のピンを勢いよく引っ張り焚き火の中に投げ入れた。



バババババッ!!!!!!



爆弾はキャットが思っていた以上に威力を発揮してくれた。
まるでパーティーの様に。
火に集まっていた奴等は火から勢いよく跳び跳ねてきたペイント弾によってアチコチから死亡宣告の音が鳴り響いた。
悲鳴と混乱がテントを襲った。


武器を持っても、何処から来ているのか分からず、辺り構わずペイント弾を撃って、仲間まで誤射してしまう者。
悲鳴ばかりを上げて逃げ回りパニックになり草むらに逃げ込む者。


修利は容赦なくペイント弾を撃ち込んだ。


キャットもワイヤーに足を取られて転んでいる女達にペイント弾を撃ち込んでいった。


ワイヤーが張られてない所から逃げ出した女達は真っ直ぐ逃げていった。




キャットと修利は木に登りほとぼりが覚めるのをジット待った。



やがて、SPがやって来て死亡宣告した女達を連れて行ったが、殆んどの奴等は気絶していた。
キャットのペイント爆弾はかなりの威力で下手したら、気絶位では済まなかっただろう。


辺りは静寂が戻った。
キャットと修利はインカムで通信し木から降りて、テントや物資を調べ始めた。


修利がテントの横に転がっていたバッグを拾うとき、テントの中から人の気配を感じ取った。


銃を構えて、ゆっくりテントの入り口に回り込み、中に入った。


『誰だ?』


修利は声を圧し殺し言った。
銃は構えたまま。


コトリと小さな音がして、女の子が一人体を震えさせてゆっくり修利の前に出てきた。
両手は顔の横まで上げていた。


修利はそのか弱そうな女の子を見て、溜め息をついた。
こんな女の子までゲームに参加してるのか?


女の子は涙を流して、震えていた。

修利は一瞬、照準を女の子からずらした。
女の子の目がキラリと光り、スカートからナイフを取り出しながら、修利めがけて投げた。
修利はヤられる!!と思った瞬間。




ガキン!!



キャットがバッグを投げ、修利とナイフの間に入って、ナイフはバッグの中の何かに突き刺さったらしい。


キャットはペイント弾を女の子の眉間目掛けて撃った。
見事ヒットし死亡宣告音が鳴った。


キャットは気絶した女の子の側に行き、武器とペイント弾を奪いながら言った。


『だから言ったでしょ。ヤらなきゃ、ヤられるわよ。って…。』


修利はホッとした。そして思った。
これはゲームなのに、この緊張感を保つのは並大抵では無い。
オヤジはこんな思いを本物の戦場で味わったのか………。
フッと絵梨佳の顔が浮かんだ…。



!!



修利は無償に絵梨佳に会いたくなった。
早く、このゲームを終わらせて帰ろう。







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