もし僕がロボットになっても
幸い、父の財布には大量に沢山の札束が入っていたし、いちいち一束なくなったくらいでお金の枚数を数えるほど貧乏ではなかったし、父はよく外で遊んで帰ってきたものだから、酔って金を使ったのだろう。そんな風に思わせるのは余裕だった。ばれることは決してなかった。
それから毎日お金を盗んではいじめっ子に金をせびられる。
僕は家と学校で偽りの仮面をかぶることになった。
家ではいい子を演じながらお金を盗み、学校ではいじめに耐えながら親には心配をかけないようになにも言うことはない。地獄のような、そんな日々だった。
僕は当然クラスでもパシリに使われることがあったが、基本的には無視されていた。

キーンコーンカーン。
授業のチャイムが鳴る。
担任「今日の日直は、帰りの会までにノートを職員室までとりにきておくこと」

そう言って、担任は教室を後にした。

いじめっこ「あーめんどくさい。みなさーん、今日も中澤くんが率先して日誌を書いて、日直の仕事をやってくれるそうです!」

クラスのみんなが僕に向けて拍手する。
それが僕の毎日の日課だった。奴隷ごっことはこういうことを言うのかもしれない。何も言い返せない僕は、黙って言うとおりにした。

当然、何度もいじめたやつを一度は殺してやろうか考えたこともある。だけど、そんなことをしたら今までの自分の我慢はどうなる?仮面をかぶる意味はなくなってしまうし、ここは忍耐を使うところだ。今までだってがんばってきたんだろう?僕は自分自身に自問自答を繰り返した。
そう考えて、決して殺人をしようなんて、決断にはいたらなかった。
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