もし僕がロボットになっても
結局けんじは当然ながら謹慎処分になった。
放課後に体育教官室に呼び出され、柔道部の先生に自分のやったようなことを今度はけんじがされる。そして、いつもの謹慎処分。
謹慎になっても退学にはならなかったのは学校の理事長もけんじの父親の存在が怖かったからだ。

僕は二日後、謹慎中のけんじの自宅近くまでいった。
大きな塀でかこまれた屋敷で玄関やいたるところに監視カメラがついていた。屋敷の周辺には黒塗りの車が何台か止められていた。
少し緊張しながらも僕はチャイムを鳴らす。

チャイムからいかつい声がする。「はい。どちらさまでしょうか。」

僕「けんじくんの友人の中澤です。」

無言で玄関のオートロックが開いた。
さすが、やくざの屋敷だ。無言の圧力とはこんなことを言うのだろうか?
女性に案内され、僕はけんじの部屋へ案内された。

僕はけんじの代わりに課題を持参して、けんじに渡した後、こないだの暴行事件でどうしてそんなことが出来たのか、理由を聞いてみた。

僕「ねぇ、何であの時たすけたの?」

けんじが、驚いた顔で答えた。

「は?当たり前だろ?」


僕「そっか、だよね。」

…よくわからないが僕は確かにこう答えていたんだ。

そんなとき、けんじがブツブツ何かを呟いていた。
けんじ「何で当たり前のことして俺が謹慎になんだよ。ふざけんなよ。世の中どうにかしてるぜ。こんな家系でも父ちゃんだってそう言って教えてくれたのによ、この有り様かよ。まぢふざけんなよ。」

壁に向かって課題を投げつけた。
相変わらず、暴力的なやつだ。

そう呟くけんじを横目に僕はただ、ただ、そんなけんじの姿だけをみてずっと黙っていた。

なぜ・・・なぜ?
そんな疑問しか僕の頭にはなかった。
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