背龍綺譚(せりゅうきたん)改
龍の力で虎の封印を…
虎の力で龍の封印を…
何代にも渡り(稀縁屋)が必要とされる理由…
この街では、人以外のモノが力を必要としているからだ…と、
砦は理解した。
モノに力が宿る程、古い時代から物を慈しみ大切にして繁栄した街だからこその仕事。
「じゃ…買い物の続きだな…お前のお菓子買うんだよな?」
「え?このまま?」
暫く振りの光を浴び、何度も背びれを見せ心配そうに水面を回遊する鰻。
「夜には天に龍として昇るだろうからな」
「見届けないの?」
「稀縁屋の仕事は原因の追求と手助けまでだからな…見届けるまでの義務は無い」
「うん…元気でね…」
仁龔の背中を追いかけ井戸に背を向ける。
その先に居る仁龔の背中が辛そうなのに気付き駆け寄る。
「やっぱり辛そう…大丈夫なの?」
「ん?ああ、今は…」
帰宅後…
買い物の荷解きをしながら充に報告をする。
「そうかい…ご苦労様…実はね…」
近く、区画整理で古井戸が取り壊される事を教えてくれた。
「そうなんだ…間に合って良かった…仁龔は?」
「部屋で休んでるよ。龍は便利なんだが…身体を酷使するからね…」
「そう言えば…古井戸でも辛そうだった
…」
自分の背中には、蜻蛉が戻っているのを確認した。
「ほら…これ…アンタのだろ?上手く出来てるもんだね…」
蜻蛉の飴細工を充が見つめる。
砦が買ったお菓子を呆れながら渡す。
「一気に食べるんじゃないよ!」
「分かってる!!」
隣りの部屋で寝ている仁龔を起こさない
様に気をつけて二階へ上がる。
古井戸にいた鰻は龍となり、天へ昇れただろうか?
そんな事を考えながらベッドに入った。