背龍綺譚(せりゅうきたん)改
「着いたぞ」
そう言い切る仁龔を見ると間違い無く、充はここに居るのだろうが…
砦は目を疑った。

「ねぇ…ここって…」

「ホストクラブです」
あっさり認められてしまった。

冷静を装い、入口に掲げられた在籍ホストの写真の中に仁龔を見つける。

「ねぇ…仁龔もホストなの?」

「そうだ」
少し恥ずかしそうに、あっさりと認める。

(ホストクラブなんてテレビでしか知ら
ない…)
砦の顔はネオンで照らされる。

「ほら…マダムが待ってる…」
砦はは仁龔のジャケットの裾を握り締めて立ち尽くしてた。

「何?赤ちゃんみたいに…」
意地悪く口角で笑う。

「あ…ゴメン…マダムって呼ぶの?大ママの事」
促されながら砦は足を踏み入れる。

「この店のオーナーだからな、店の者たちは呼んでる」

「そうなんだ…」

薄暗いクロークを仁龔のジャケットを握ったまま進む。

「いらっしゃいませ…」
(いかにも!!)と言う感じの男に声をかけられる。

「砦様だ」
思わず仁龔の後ろに半分くらい隠れなが
ら挨拶をする。

「お待ちしてました…地下へどうぞ」
扉を開けてくれたホストに会釈をし、砦達は店内へ。

「砦を連れて来ました…」
仁龔が開けた扉の向こうには、相変わらず元気な充が立っていた。

「大ママ!!」
思わず駆け寄った砦は充に抱き付く。
それと同時に妙に安心していた。

「砦…久し振りだ…顔、良く見せて!!」

砦には祖母が少し小さくなって見えたが
、これは砦自身が大きくなったからだろうか?

「うん…ママも元気…それでね…」
話したい事が、たくさんある砦の声は充に遮られた。
充の目配せに頷く仁龔が扉を締め、砦の
前に立ち、ジャケットとシャツを脱ぎはじめる。
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