キミの空になりたい
涌井君を好きになってからは、姿を目にするだけで、ドキドキが止まらなくなった。
今まで、何気なくこの光景を見ていたことが、信じられないくらいに。
恋をする前は、すれ違っても何も思わなかったし、もしかしたらすれ違った事すら気が付かなかっただろう。
野球部の話題だって、耳にする事さえなかったし。
好きになってしまったら、世界が180度変わってしまう。
同じ空間にいて、同じ時間を過ごして。
目が合うだけでも嬉しいけれど、言葉を交わせたらもっと嬉しく思う。
「汐音ちゃん。まだ教室にいる?」
窓枠に手をかけながら、遠ざかる涌井君の姿を見ていたら、後ろから声をかけられた。