キミの空になりたい
「……ああ、そうだな。藤波さんの言う通り。マネージャーも野球部の一員で、目指してる場所は同じだ」
そう言って、涌井君は夕日を見て、まぶしそうに目を細めた。
夕日に照らされた涌井君の顔はオレンジ色。
ドキッとして、私は目をそらした。
「今年は最後だから、絶対に負けられない」
涌井君はそう言うと、賽銭箱の前に立つ。
紙袋をにぎりしめて、私はそっと顔を上げた。
エナメルバッグにぶらさがる、二つのお守り。
涌井君には多くの声援よりも、たった一人の声援があれば嬉しいのかもしれない。
野球ボールのお守りをくれた女の子だけの声援があれば……。