キミの空になりたい
スッと背筋を伸ばして、お辞儀をする涌井君の後ろ姿は、気迫に満ち溢れていた。
誰にも負けない……そんな気持ちが伝わってくる。
私は涌井君の後ろ姿を見つめながら、そっと手をあわせた。
神様……どうか、涌井君の夢を叶えて下さい……。
願わずにはいられない。
真剣に必勝祈願をする涌井君の姿を見てしまったら。
「……手が震えるんだ」
「え?」
頭を上げた涌井君は、こちらを振り返らずに背を向けたままそう言った。
手が震える……?
「これが最後だって思ったら、緊張で手が震える。情けないだろ?」
涌井君は、ゆっくりとこちらを振り返る。
肩をすくめて、少し切なげに笑っていた。