キミの空になりたい


「藤波さん、隣の学区だったんだ?」


「うん。涌井君は西中だったんだね。私、中学の時は部活の試合で西中によく来てたんだよー」



……そこまで話して、私は後悔した。


涌井君にとっては、どうでもいい話題だったかも。



「そっか。オレも北中には何度か行ったよ」


「……そ、そっか」



私は、『隣の学区』と言っただけで、『北中出身だった』とは言っていない。


だから、涌井君が何で私が北中出身だって事を知っているのかはしらないけれど、知っていてくれたっていう事だけが嬉しく感じた。


たったそれだけの事でも、心から嬉しく思える。


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